柴山一幸は『I’ll be there』の仕上がりには満足しつつも、その反応に対しては納得いかない部分があったので、次のアルバムではサポート体制を強化するためいくつかのレーベルと交渉し、ステップアップを狙った。
その結果、柴山とライヴで共演したバンド、大なり><小なりのギタリスト、キハラ宙がレーベルディレクターを務めるGO→STに参加することとなった。
ちなみにGO→STは2007年に設立され、ジャック達と大なり><小なりを中心にジャック達、シネマの一色進や西村哲也のソロアルバムなどがリリースされている。

71AjEmBYh0L._SL1137_

『君とオンガク』の録音は前作に続きサウンドプロデュースを担当した炭竃智弘がキーボード、ギターに青木孝明、ベースに若山隆行、ドラムスに宮川剛という顔触れを中心に進行した。
ホーンセクションには前作に続いての三浦千明、堂島孝平楽団の湯浅佳代子、加藤順子が参加していて、半数の曲においてフィーチャーされている。ホーンセクションの役割が増した理由はこれまであまり前面に出ることがなかったソウル色が強い楽曲が多く収録されたことにある。『涙色スケルトン』や「あ・い・う」の初期ヴァージョンで垣間見えたソウル感覚を推し進めたもので、新境地を開拓したといえるだろう。
冒頭の「Hello! Hello!」「僕は今も信じてる」にそれは顕著に表れている。その2曲は西村明正との共作である。ソウル色が強い作品と「サクカサカナイカ」「手はおひざ」に「ポイントカード」など柴山のパーソナルな部分が強い作品が同居している。
そして、柴山にとって初のカヴァー曲である小坂忠の名曲「機関車」を取り上げ、ライヴでも重要な位置にある曲となった。
このアルバムのリリース時は音楽雑誌にも多数掲載されていて、前年の『I’ll be there』を含め10年続けてアルバムを発表するという宣言はその流れの中で飛び出した。

IMGP4238

『君とオンガク』発売記念ライヴでのキャッシュバック(東京公演のみ)は、柴山のライヴ前から新譜を聴いていた方がライヴを更に楽しめるという考えからのアイデアだった。これに関連する赤裸々な告白も当時話題になった。
アルバム発売記念ライヴ以降も柴山の活動は衰えず、8月には『君とオンガク』と同日に新作『サイダーの庭』をリリースしたスカートとの2マンライヴを代々木バーバラで開催し、アンコールではスカートの澤部渡をヴォーカルに迎えCHAGE and ASKAの「YAH YAH YAH」をオリジナルに忠実な形で再現している(澤部がASKA、柴山がCHAGEのパートを歌った)。
元オフコースの鈴木康博のラジオ番組「鈴木康博のメインストリートをつっ走れ!」にゲスト出演し、オフコース時代の名曲「でももう花はいらない」をセッションしている。その流れの中で7月鈴木康博Younger Than Yesterday での公演のオープニングアクトを務めた。
柴山の活動は全て順調に進んでいるかのように思えたが、8月の代々木バーバラでのスカートとのライヴで炭竃との活動は一区切りを迎えてしまうのだった。

文中敬称を略させていただきました。
(text by Hiroshi Sugai)

IMGP3780