柴山一幸の活動拠点であるnico musicは『涙色スケルトン』と『I’ll be there』の間にある女性アーチストの作品を柴山のプロデュースでリリースしている。必然的に2度目の沈黙期に柴山はそのアーチストのサポートとなった。その関連で『I’ll be there』と『君とオンガク』のサウンドプロデュースを担当した炭竃智弘と出会っている。
サポートでライヴに帯同していたある日、ライヴハウスのスタッフにライヴを再開したらと持ちかけられたことと、柴山は40という年齢的な区切りを迎えて、まずはライヴから活動を再開することを決意した。
2011年9月、背中を押してくれた渋谷7th floorが再スタートの場所だった。

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2012年にはそれまででは考えられないペースでライヴに出演、自らのライフワークと呼べるイベント「ネガティブナイト」を立ち上げる(現在は「新ネガティブナイト」に進化して継続している)。
イベントをオーガナイズしたり、様々なライヴに出演したことで、沈黙期の自分に何が足りなかったのか、ある程度の結論をつかむことになる。柴山がどうしたらライヴを観た人々に楽しんでもらえるか、考えに考えぬく姿勢はこの時期に培われたのではないだろうか。そして、ライヴの本数が増えるに伴い、ヴォーカリストとして声量、表現力が以前より格段に成長したのは、この時期のライヴの積み重ねが最大の要因であろう。

3rd
満を持してレコーディングの準備を始めたのは2012年のことだった。ベースに若山隆行、ギターにはメトロトロンレコードの先輩の青木孝明、ドラムスには宮川剛、キーボードには炭竃という顔触れでベーシックな部分を録音した。
エンジニアはSound Studio DALIの大野順平が担当した。大野はこのアルバムから最新作の『Fly Fly Fly』まで全てのアルバムを担当して、柴山にとって欠かせない存在になっている。
このアルバムのレコーディング前から青木孝明の紹介で知り合った、関西在住のシンガーソングライター、西村明正との直接ではなくオンライン上のデータのやりとりを中心にした共同作業によって生まれた作品「見果てた男」「環状レース」「万能細胞」を編曲し直して収録している。この中では「万能細胞」は柴山のバンド編成でのライヴでは欠かせない曲で、他アーチストとセッションされることが多い。
杉浦琢雄との共作曲「あなたの胸に抱かれたままで」は近年の杉浦との2人ライヴの定番と呼べるだろう。
他にも「オマモリ」などライヴでの演奏頻度が高い曲が多く、ライヴごとに演奏曲のリストを作ると、ここ最近のライヴでも『YELLING』や『Fly Fly Fly』収録曲と並ぶ位に演奏されていることがわかる。
このアルバムのホーンセクションは1stアルバムにも参加していた川口義之がサックス、トロンボーンには青山陽一&the bluemountainsなどで活動中の伊藤隆博、そしてその後柴山のライヴ、レコーディングに数多く参加することになる三浦千明という顔触れである。
その他、ネガティブナイトの出演をきっかけに知り合った残像カフェの大森元気がマンドリンで参加している。
ジャケットのデザインは前作『涙色スケルトン』に続いてアベミズキが担当していて、ビートルズのサイケデリック期を彷彿させる内容に寄り添った作品になっている。
柴山一幸にとって2013年は完全復活の年でありつつも、2014年で更に飛躍するための準備の年だったといえるのではないだろうか。

文中敬称を略させていただきました。
(text by Hiroshi Sugai)

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